2013年5月21日火曜日

三重県桑名市にある「輪中の郷」という資料館

「輪中の郷」の看板
「輪中(わじゅう)」とは、学校で習ったので、知っていたつもりなのですが、天井川と同義の環境を指すものと思い込んでいました。
 しかし、輪中には定義があり、地域社会組織やその生活を守る習慣と仕組みまでも含めたものをそう呼ぶのだと、資料館を訪ねてみて認識を新たにしました。
 入館時にもらった、パンフレットにある輪中の定義をご紹介します。

輪中とは低くて湿った土地にある集落と農地を囲む堤防があって、水を防ぐための組織体を作って、外水や内水を管理する治水共同体、またはそれがある地域の事をいいます。
 

パンフレット「輪中と水屋」 (輪中の郷発行)より

ですから、人間がこの伊勢国桑名郡長嶋地域に住み、社会生活を営んでから現在まで、大変広くて深い歴史があると言う訳です。水との戦い、災害の歴史です。そしてまた、その反対側にある恵み。それから、人間が起こす争いもあります。
 作る、運ぶ、食う、戦う、防ぐ、ための情報や技術、方法や仕組みを長嶋の人々は、「生活」として営み続けて来た訳です。
 
 私は、伊勢国長嶋の一向一揆について、また、輪中について知りたいと思い、気軽に(池田勝正の動きとは直接関係無いので...)訪ねてみたのですが、大変勉強になりました。また、非常に興味深い展示で、よく解りました。たまたま、館長さん直々のお話しも聞く事ができ、幸運でもありました。

近年では、海外からもこの「輪中」について知りたいと、訪ねて来られるそうで、日本人の治水の工夫が、優れた資料の保存・整理技術によって、他地域へ、更に世界の役に立ちつつあるようです。
 こういう難題を克服して来た日本の取組みもすばらしいと思いますが、地域の方々のご苦労も国の事業に活かされ、また、展示される事で、それらが一堂に展望できるという事は、正に苦労が報われたといえるのかも知れません。
 先人の苦労を忘れない意味でも、大変意義深い資料館だと思いました。改めて、資料の保存と活用は、大変重要である事を認識させられました。

追伸:堤防改修の難工事を命を賭して完成させた薩摩藩士平田靭負翁以下烈士の歴史も是非知って欲しいと思います。
木曽三川治水偉人伝 平田靭負正輔(国土交通省中部地方整備局木曽川下流河川事務所ホームページ)
※靭負(ゆきえ)とは、衛門府の和訓で、唐名は金吾。

桑名市を訪ねる事があれば、是非一見される事をオススメします。個人的には、展示資料の最後に見送ってくれる、金魚と鯉もステキな演出だなぁと思います。思い出にも残ります。
※ちなみに輪中の郷は、歴史民俗資料館・体験教室・体験農園施設が一体になった施設です。詳しくはホームページをご覧下さい。
URL:http://www.waju.jp

最後に、この長島町の地形などは、摂津・河内国にも室町時代には湿地が多く残っていたため、その文化や生活の参考になると思いました。また、長嶋一向一揆は、五畿内での反織田信長とも連動しており、やはり、伊勢国方面の動きももう少し見ておかないとダメだなぁ、と思いを深くしました。

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